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赤塚犬猫病院・飯田貴陽獣医師が「犬・猫の呼吸器臨床研究会 第6回年次大会」で最優秀賞を受賞しました

VCA Japanグループの赤塚犬猫病院に勤務する飯田貴陽獣医師が、2025年10月13日に開催された「犬・猫の呼吸器臨床研究会 第6回年次大会」において、アワード演題の最優秀賞を受賞しました。

受賞演題名は、
「犬の急性肺炎症例の予後予測因子としてのヒアルロン酸値とAPPLEScoreの評価」
です。

 


研究の背景と目的

血管内皮の表面には「グリコカリックス」と呼ばれる糖タンパク質の層が存在し、血管の透過性や炎症反応の制御に重要な役割を果たしています。グリコカリックスが傷害されると、その主成分であるヒアルロン酸(HA)が血中に流出し、濃度が上昇すると考えられています。

人医療では、COVID-19をはじめとした急性肺炎症例で、グリコカリックス傷害と予後との関連を検討した報告が多数みられます。一方、獣医療においては、敗血症や粘液腫様僧帽弁閉鎖不全症に関する報告はあるものの、犬の急性肺炎を対象とした臨床研究はほとんどありません。

また、APPLEスコア(Acute Patient Physiologic and Laboratory Evaluation score)は、ICU入院犬の死亡率を予測するための指標として近年注目されています。
そこで本研究では、血中ヒアルロン酸値とAPPLEスコアが、犬の急性肺炎症例における予後予測因子となり得るかを検討しました。

 


研究方法の概要

赤塚犬猫病院で経験した犬の急性肺炎7例を対象に以下を評価しました。

・血中ヒアルロン酸(HA)濃度
・APPLEスコア
・年齢や転帰(生存/死亡)との関連

さらに、正常犬群と急性肺炎症例群で血中ヒアルロン酸値を比較し、急性肺炎におけるグリコカリックス傷害の有無を検証しました。


(図)正常犬と急性肺炎症例のヒアルロン酸値
※正常犬(G1)と急性肺炎症例(G2+G3)における血中ヒアルロン酸値の分布を示したボックスプロット。

 


主な結果と考察

・高齢犬で発症した急性肺炎は転帰不良となる傾向が認められました。
・正常犬群と急性肺炎症例群のあいだで、血中ヒアルロン酸値に明らかな差は認められませんでした。
・一方で、転帰不良例ではAPPLEスコアが有意に高値を示し、死亡率の高い症例を抽出できる可能性が示されました。

これらの結果から、血中ヒアルロン酸値についてはさらなる症例の蓄積と検討が必要である一方、APPLEスコアは犬の急性肺炎における有用な予後予測指標となり得ることが示唆されました。

 


VCA Japanとして

今回の最優秀賞受賞は、日々の臨床の中から生まれた疑問を研究という形で深め、犬の急性肺炎に対する診療の質の向上につなげようとする取り組みが高く評価されたものです。

VCA Japanでは、グループ病院に所属する獣医師・動物看護スタッフの学会参加や研究活動を今後も継続して支援し、エビデンスに基づいたより良い医療の提供に努めてまいります。

飯田先生、このたびの最優秀賞受賞、誠におめでとうございます。

 

参考リンク:一般社団法人 犬・猫の呼吸器臨床研究会 https://www.verms.or.jp/